• no.292
  • 住宅No.32

    • カテゴリー:独立住宅
    • 設計:池辺陽
    • 設計協力等:管理:西澤文隆(坂倉建築研究所)
    • 施工:不明
    • 竣工年:1955
    • 所在地: 大阪
    • 当該建物は、当時東京大学助教授だった建築家の池辺陽が、戦後復興の過程で、工業化された建築資材を用いて廉価でありながら質の高い住宅を建てることを目的として設計した、住宅シリーズの32番目に建設されたもの。木造の在来軸組み構法によるもので、片流れ屋根を持つ一部2階建てとなっている。床面積は1階が33.4㎡、2階が12.3㎡で延床面積45.7㎡という小さな住宅である。平面計画的には、1階の南半分をピアノ練習スペース、北半分に食堂と台所、便所、風呂を配置し、2階には南側に寝室を設けている。これらによって、便所や風呂以外は、各部屋が一体化した空間に収められつつ、その床の高さを変えることで各部屋の独立性をも生み出している。戦後復興の中、ローコストでありながら機能性や合理性を追求した「立体最小限住居」として池辺によって設計され1950年に竣工した「住宅No.3」と同等のものと位置づけられる。「最小限住居」に「立体」という言葉が付加されているのは、ヨーロッパで戦前から課題となった「最小限住宅」が平面計画を中心に検討されていたことに対して、池辺が、住宅は空間全体で検討すべきだと考えたためである。竣工後、1980年代以降、一部が減築され内部も改装されてしまっていたが、建築家のスガショウタロウ(菅正太郎)氏により、2017年には機能性を高めつつもオリジナルの姿に戻す改修が行われた。池辺による「住宅」シリーズは、その多くが失われている。そんな中、池辺の建築作品の原点に位置づけられる「立体最小限住居」に相当する建物が現存していることは、希少性が高く、戦後モダニズム建築を理解する上で極めて貴重な存在である。
    • docomomo選定年度:2025