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DOCOMOMO International 総会

2014年11月05日

2014年9月25日から27日にかけて第13回ドコモモ国際会議が昨年開館した国立現代美術館ソウル館を会場に開催された。大会のテーマはExpansion and Conflict(日本語訳だと順序が反対になって衝突と発展)であり、アジアにおけるモダン・ムーヴメント(近代運動)の導入と発展過程を象徴する言葉として採用された。それを表すかのように、今回の会議において新たにアジアからドコモモの支部が、前回大会で暫定支部であった香港、マカオを含めて新たにタイ、台湾、クェート(中近東)が承認された。ドコモモの現会長であるアナ・トストイスのアジア、アフリカ地域へのドコモモの活動を普及させるという考えが、ここ数年で実現化されており、今後もその両地域への広がりが計画されている。

基調講演には日本から建築家の槇文彦氏が招待され、自身が1960年代に発表した群造形論がその後の作品にどのように反映されたのかを、流暢な英語によってプレゼンテーションされた。槇氏は最終日にも登壇され感想を述べられた。ドコモモの創設者であるユーベル・フォン・ヘンケットから日本支部の設立を要請されたとき、槇氏の名前が出たことを記憶しているが、もともとオランダの近代建築に興味を持っていた槇氏は、数年前からドコモモ・ジャパンのメンバーとなっており、ドコモモの存在意義を高く評価していただいている。今回、ソウル大会において、各国のドコモモのメンバーも槇氏と会話ができ大変満足しているようであった。

大会のメインプログラムである学術発表は、Expansion and Conflict のテーマの下、保存技術、ケーススタディ、都市とランドスケープ、アジアン・セッションなどに分かれて活発な議論が行なわれた。論文審査員とセッションチェアとして山名善之氏と渡邉研司が担当し、日本からの論文発表者として山名氏、富田英夫氏が登壇し学術的成果を発表した。ポスターセッションには、亀井靖子氏、鰺坂徹氏が参加した。個人的に興味深かったのは、富田氏によるドイツと北朝鮮における建築家の活動についてや韓国人による日本人居留地の計画についての発表で、このように国を超えたトランスナショナルな研究こそ学際的広がりが期待でき、これから必要な姿勢だと感じた。プログラムの最終日には、ヘンケット氏がチェアを務めたラウンドテーブル・セッションがあり、サステナビリティをテーマにして次世代を担う若手の研究者や建築家が参加して活発な議論を行なった。

二日目に行なわれたカウンシル・ミーティングにおいて、前述した新しい支部加盟国が承認され、これからの活動の広がりが期待される。今回、オブザーバーとして近代建築が危機的な状況にあるカンボジアから、日本の国際交流基金の支援によって2名の研究者と建築家が参加し、近い将来ドコモモ・カンボジアの設立に向けて協力していくことを確認した。またドコモモ設立以来掲げているアイントホーヘン宣言にサステナビリティとリユースという概念が付け加えられ、ドコモモが単に近代建築の保存を主張するだけでなく、どのように持続可能性を満たし、リビングヘリテージ(生きた遺産)として現代の機能に適合するようリユースするのかという考え方が承認された。これは新たにアイントホーヘン=ソウル宣言として採択された。

本会議が始まる5日前から恒例のドコモモ・ワークショップがソウルにある設計事務所と建築家、ドコモモのメンバーらがチューターとして、総勢50人ほどが参加して開催された。日本からは東京理科大学、日本大学生産工学部、鹿児島大学、東海大学から大学院生を中心に15名ほどが参加した。このワークショップの開催前に行なわれたドコモモ・コリアによるコンペティションで扱われた同じSeawoon Arcade を対象敷地として、その保存・再生に関するアイデアが各グループから提案され、ザハ・ハディドの設計によるトンデムン・デザイン・センター内において英語による発表が行なわれた。

ドコモモが設立されて25年が経過し、今回の国際会議はアジアで初めての開催であった。前述したように、ヨーロッパ主導からアジア・アフリカへの広がりがこの会議の実施によって一層明確になったと言えるし、それゆえこれからのドコモモ・ジャパンによる活動もその内容が問われることになるだろう。国内外問わずドコモモの活動の一層の充実化が期待される。(文責:渡邊)

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