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文化遺産におけるオーセンティシティとインテグリティの本質を考える

2017年01月18日

DOCOMOMO Japan 後援イベントの案内です。

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来る2月4日(土)、京都工芸繊維大学にて、保存再生学特別研究会「文化遺産におけるオーセンティシティとインテグリティの本質を考える」を開催いたします。歴史的建築物の保存再生にとって重要な「オーセンティシティ」と「インテグリティ」という概念に焦点を当て、その意味や両者の関係性をきちんと検討し、保存再生の実践にどのように用いていくかを議論する会です。

「オーセンティシティ」は日本語では「真正性」と訳されて、文化遺産の保存再生では欠かせない概念となっていますが、近年もう一つの「インテグリティ」が、重要な概念として使われます。ところが、安易に「全体性」や「完全性」などと日本語訳されるだけで、その定義や意味は曖昧で判然としません。

そこで、世界遺産の選定やモダニズム建築の保存再生、文化的景観などにお詳しい3人の専門家をお招きし、2つの概念の意味や歴史的経緯を繙きながら、知識や議論を共有し、今後の歴史的建築物の保存再生の実践につなげたいと思います。特に都市部に建つ近代建築やモダニズム建築の保存再生にとっては、「オーセンティシティ」の概念が有効でないこともあり、「インテグリティ」が重要な概念となるように思います。最先端の議論の場になるはずです。ふるってご参加ください。

【研究会案内】

京都工芸繊維大学大学院 特別教育プログラム
建築都市保存再生学コース2016

保存再生学 特別研究会
「文化遺産におけるオーセンティシティとインテグリティの本質を考える」

■登壇者

パネリスト:
稲葉信子(筑波大学教授)
山名善之(東京理科大学教授)
清水重敦(京都工芸繊維大学教授)

司会:
田原幸夫(京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab特任教授)
笠原一人(京都工芸繊維大学助教)

■日時:2017年2月4日(土)13時30分−

■会場:京都工芸繊維大学 60周年記念館 2階 大セミナー室

■所在地:京都市左京区松ヶ崎橋上町1(京都市営地下鉄松ヶ崎駅下車徒歩10分)

■定員:90名

■入場:無料(申込不要、当日先着順)

■主催:京都工芸繊維大学大学院建築学専攻/京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab

■後援:日本イコモス国内委員会/DOCOMOMO Japan

■プログラム

13:30〜
趣旨説明:田原幸夫(京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab教授)

14:00〜
世界遺産会議における議論から見えるもの
稲葉信子(筑波大学教授)

20世紀建築遺産における新たなる視点
山名善之(東京理科大学教授)

文化遺産における文化的景観という概念
清水重敦(京都工芸繊維大学教授)

16:00〜
座談会:AuthenticityとIntegrityを巡る現状について
上記登壇者+笠原一人(京都工芸繊維大学助教)

18:00〜
講師、参加者による懇親会|プラザKIT[会費制] 

■研究会趣旨

 1992年、日本がユネスコ世界遺産条約に加盟した時から、文化遺産の評価基準であるAuthenticity(オーセンティシティ)という概念が、日本の文化財の世界にも導入された。さらに1994年の世界文化遺産奈良会議において起草された「奈良ドキュメント」は、それまで西欧中心の概念であったAuthenticityを、日本も含む世界の文化遺産共通の評価基準とすべく議論を重ねた結果の歴史的成果であり、Authenticityの概念はここで大きく拡大されることになった。そして21世紀を迎えた今、かつてはユネスコ自然遺産における評価基準であったIntegrity(インテグリティ)なる概念が、文化遺産の評価基準としても適用されるようになり、世界の文化遺産の評価軸はますます複雑化している。これは世界の国々の文化的・歴史的・風土的多様性に加え、20世紀建築や産業施設といった、かつては文化遺産の範疇の外にあったものが、続々と文化遺産の仲間入りをしている現代の状況を反映した結果である。さらには文化的景観という新たな分野が、文化遺産の世界に仲間入りしてきたこととも無関係ではない。

 しかしここには大きな課題が横たわっている。そもそも日本語には存在しなかったAuthenticity さらにはIntegrityという概念が、ユネスコ世界遺産条約というものを契機に日本にも導入された結果、複雑な現代の状況の中で、言葉の一人歩きが始まりつつあるのではないかという懸念である。世界遺産条約への加盟にあたって国内でも相当な議論が積み重ねられたAuthenticityという概念については、現在まで多くの情報が発信され、専門家の間でも比較的コンセンサスは得られてきたと考えられるが、現在のより大きな問題はIntegrityについてである。そもそも世界遺産条約発効5年後の1977年、パリでのガイドライン検討会議において、文化遺産の評価理念として既にIntegrityという概念が提示されており、最終的にAuthenticityが採用されたものの、この二つの概念についての議論はいまだ終わっていないとも考えられるのである。AuthenticityとIntegrityは、文化遺産の評価においてどれほど異なる概念なのだろうか。そして我々は日本人として、この二つの言葉の意味する本質をどれだけ理解しているのだろうか。この大きな課題に取り組まずして21世紀の保存再生学は成立しない。

■問い合わせ:
国立大学法人 京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab 事務局
info@d-lab.kit.ac.jp/tel: 075 -724 -7282/ww.d-lab.kit.ac.jp
Facebook: KYOTO Design Lab/Twitter: @kyotodesignlab
建築都市保存再生学コース 特別研究会 2016 チラシ