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registration 日本におけるモダン・ムーブメントの建築
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- 篠原一男
- 木村俊彦・和田章(構造設計)
- 東京工業大学大岡山キャンパスの正門脇に建つ東京工業大学百年記念館は、大学の歴史や重要な発明品・研究成果を収蔵・展示する博物館機能を備えた研究交流施設であり、1881年創立の東京職工学校に起源を持つ東京工業大学の創立100周年記念事業の一つとして構想され、当時の建築学科教授・篠原一男により設計がなされ、1987年に竣工した。 篠原は百年記念館の設計にあたり、その造形言語には彼が信奉する1920年代ヨーロッパ・モダニズム建築に由来する幾何学とその抽象構成を用いつつ、全体構成においては「カオスの美」や「インビジブル・マシーン」といった巨大な現代都市・東京を象徴する新たな美意識をコンセプトに据え、形態においては宙に浮く屈折したハーフシリンダーをガラスと金属パネルで構成されたメインボディーに貫入させ、それにより内部においては予測不可能で複雑な空間断片を、外観においては内部機能と無関係の抽象的で象徴的な造形を創出した。この複雑な構造物の構造設計には、高度な立体解析を可能にする大型コンピューターが導入された。また、その多様な形態が貫入し合う非日常的な空間や外観は「理工系の大学博物館」にふさわしい未来的なイメージを与え、竣工時には数多くのメディアで取り上げられ、社会的にも話題を呼んだ。 東京工業大学百年記念館は、1950年代から一貫して住宅設計を通じ、自身の設計手法を構築・展開してきた篠原一男が、母校の記念館という大規模建築の設計に際してそれを更に展開し、現代都市「東京」に建つ建築のあり方を批評的に示した作品という点で、篠原の集大成と呼べる作品であり、また1980年代の日本を代表する建築作品の一つとして高く評価することができる。
- 1987
- 東京都目黒区