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registration 日本におけるモダン・ムーブメントの建築
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慶応義塾寄宿舎(現 慶応義塾大学日吉寄宿舎)
- 谷口吉郎
- 島藤
- 南寮の改修工事に於いて、外装はできるかぎり創建当時に近い状態に復元改修され、また、内装・設備については現在の寄宿舎生の生活に適した機能的な改修、改変が行われた。これらの改変については写真、図面等で記録保存され、また、当初の建築物に係わる資料が慶應義塾大学管財課、福澤研究センター、アート・センター等に保管整理されている。内装改修においてインテグリティが如何に保持されたかの検証は必要であるが、使い続けながらの保存であるリビングヘリテージの良例として評価に値する。 慶応義塾大学(日吉)寄宿舎(南寮及び浴場棟)が横浜市認定歴史建造物(2011 年 10 月)に指定され、建築群の歴史的価値が部分的ではあるが認められている。今後は、配置を含む寄宿舎三棟、浴室棟の建築群全体としての価値が重要である点から、南寮以外の北寮、中寮、浴場棟も含めた調査、検証が必要とされ、南寮同様にリビングヘリテージとしての保存改修を経ての建物使用が望まれる。また、保存・復元・再利用の際、創建当時の寮生活の様子を窺い知ることのできる、少なくとも一室のオリジナル寮室復元等がされることが望ましい。 上記に示す課題はあるが、近代の高等教育の歴史において重要な役割を果たした寄宿舎制度という生活文化が継承された施設として、また、日照条件を考慮した配置計画、彩光、通風に配慮した開口部のデザイン、当時の先進的な衛生思想を反映した仕上、ディテール等を擁したモダン・ムーブメント建築群として卓越した有形文化遺産としての価値を有する。 以上より慶応義塾寄宿舎は総体としての価値を有している。
- 1937年
- 神奈川