registration 日本におけるモダン・ムーブメントの建築
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243 八代市厚生会館
- 芦原義信建築設計研究所
- 鹿島建設九州支店
- 八代市厚生会館は、建築家・芦原義信が、世界的な評価を得た「外部空間」論を構築していく出発点に位置付けられ、のちに設計手法として理論化される様々な試みがみられる。ピロティからの石垣のフレーミング、スロープから2階テラスへ至る建築的プロムナードでは、特にその試みを豊かに体験できる。外部空間自体はのちの作品と比べおおらかで、八代城本丸石垣まで広がり、この地の歴史的な外部環境を取りこんでいる。また建物の配置においても外堀跡を避けつつそれを水盤によって復活させるといった、鋭い歴史的洞察を見せる。一方でこの施設は、八代市が工業都市として近代化を目指していた時代の象徴でもあった。モダニズムの構造と表現、城郭を意識した伝統的意匠を見事に融合させ、本丸石垣とも対峙しうる重厚な存在感を示している。外部空間を構成していた別館は解体されてしまったものの、本館のみでも設計者の細やかな配慮を十分に味わえる名作である。
- 1962
- 熊本