registration 日本におけるモダン・ムーブメントの建築
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225 佐倉市庁舎
- 黒川紀章
- 安藤建設
- スライディングフォーム、リフトスラブといった革新的な工法を用いたことは、工期短縮、仮設材料節約といった当代の要請に応えるだけでなく、次代を築くため解くべき課題であった、高層化とプレファブ化という問題に対しても一つの解法を示すものであった。また、優れていたのは施工・技術のみならず、市庁舎というビルディングタイプの本質を鋭く捉えた設計には黒川の冷静さ、誠実さ、そして確かな技量が見て取れる。機能ごとに分けられた、異なる空間を要求するそれぞれの棟は、異なる構造形式を与えられ、各々芸術的な次元にまで昇華されている。また、一つの市庁舎としては、各棟が接続し、一体となることで、造形・空間がぶつかり合い、よりダイナミックな空間体験を我々は享受できる。建築の設計だけにとどまらず、建築を設計すること、つまり施工から造形に至るまでの建築にまつわる端々の問題までをも通して、新たな社会を築こうとした黒川の姿勢が、十二分に発揮された貴重な作品である。
- 1971
- 千葉