8月25日に工学院大学八王子図書館(1980)の見学会に参加してきました。この建築は、日本ではただひとりアルヴァ・アアルトに学んだ建築家、武藤章(1931-1985)の代表作品です。現在、解体の危機に瀕しており、建築学科同窓会の有志によって保存活動が行われています。1階は学生活動のためにキャンパスに開かれたピロティで、図書館の機能が2階に持ち上げられた大胆な構成です。閲覧室はワンルームの大空間で、床面のレベル差に変化をもたせ、地形の起伏のように様々な居場所を作り出しています。そして、天井には大小のトップライトが散りばめられたように設けられ、壁面に開口部が殆どありません。このトップライトは、彼が戦後の廃墟を覆っていた青空の純粋さから「青空がある限り自然光の中で読書ができるようにしたい」と説明文で述べているように、自然光をやわらかく室内に取り込ませ開放的な雰囲気すら感じさせています。また、トップライトの断面に仕組まれた空調機と合わせてデスクの下へ放熱器を設置した空調方式も興味深いものでした。これは向かい合うデスクの隔て板の間に温風を上昇させ、直接身体に沿って温風が流れる不快感を軽減するという繊細な空調計画です。このようにこの図書館から武藤章という人物がどのような建築家だったのか垣間見ることができます。彼は早世したため、これまであまり知られることのない建築家でしたが、アアルトの流れをもつ質の高い建築作品を残しており、我が国の建築史の流れのなかでも貴重な存在です。今後の動向に配慮しつつ、保存活動の協力ができればと思います。(文責:ドコモモ幹事会メンバー平井充)
工学院大学八王子図書館見学会
2014年08月27日